なぜ人は悪い噂が好きなのか?
原始時代の脳が人間にはまだ残っていることが答えとなる。
原始時代、人は集落で暮らしていた。外敵や他の部族から住処を守るために、リスクを把握することが情報として最も重要であった。
これはつまり、良い情報よりも悪い情報を得ている方が生存率が高くなったこと、それゆえ悪い情報を好む人間の個体が増えたことが、「人は悪い噂が好きである」の答えになる。
さらに、フェイクニュースは、事実を元にしたニュースよりも拡散する力が6倍もあるとの調査結果が出ている。
SNSで毎日誰かが炎上したニュースがタイムラインに表示されるが、悪い噂であり、かつ炎上の理由が憶測で語られることでフェイクニュースの様相を帯びた情報も発信される。
悪い噂であり、かつフェイクニュースというのはがん細胞のように進行が早く組織全体を蝕むちからが強いのだ。
悪い噂話好きな人間を増やさない組織戦略
あなたが経営者なら、従業員の間に根も葉もない悪い噂が広まっていることを経験したことが一度や二度あるだろう。
「経営状態が悪いらしい」「社長に出張が多いのは愛人の家にいっているらしい」などなど。
これらの悪い噂に真っ向から向き合うのは馬鹿らしい。けれど、放置しておくと悪い噂が蔓延る弱い組織になってしまう。
どう対処すべきか。それは、あなた自身が従業員の良い噂を広めるスピーカーとなるのだ。
初対面の相手には誉めると仲良くなれる、といったテクニックがある。
単に相手が気持ち良くさせることが狙いではない。
「自分を褒めた相手を否定することは自分を否定することにつながる」といった認知不協和を生み出すための心理学のテクニックである。
その心理を応用し、たとえば1on1の場で、他者を褒めるのだ。特に、その相手と直接の比較対象にならない仲の良い人が効果的だ。(相手がセールスならエンジニアやマーケッターを褒めると良い)
Aさんに対して、Aさんと仲の良いBさんを褒める。その結果、Bさんを肯定しているAさんにとって、あなたを否定することはBさんの否定、ひいてはBさんと仲の良いAさん自身の否定につながるからだ。
また、Bさんに対しても同じようにAさんを褒める、良い噂を流す。
直接褒めるよりも圧倒的に効果的である。
「社長がBさんのこと褒めてたよ」とAさんがBさんに告げ口をすればしめたもの。Bさんの脳内からはセロトニンがでること間違いなし。
良い噂は悪い噂に対して拡散力はないが、それでも良い噂を組織に広めることを怠ってはいけない。
人間の体の腸内では、善玉菌と悪玉菌が存在する。そこに、日和見菌という、善玉か悪玉どちらか多い方に加勢するという都合の良い菌が存在する。
良い噂と悪い噂に関しても同じように、噂というのは、組織における善玉と悪玉のようなもので、いかに日和見菌を味方につけることができるかが重要となる。
そのための軽い仕掛けとして、良い噂を、広まりやすい仕掛けを施して組織に拡散するように仕掛けるのだ。
残念ながら、悪玉菌が蔓延ってしまった組織には通用しないが、その場合は悪玉菌の根源を断っていくしかない。しかしながら、そのフェーズが終わった後、組織再編を行う際には良い噂を広める努力を経営者自身が先人を切って行なっていくことが大切だ。