Windows95の設計思想を生み出した中島聡氏による、仕事術の本。
「ドラッグ&ドロップ」「ダブルクリック」などの概念を生み出した伝説のプログラマと呼ばれており、エンジニアにとっては神のような存在(らしい)
数年前に一度読み、最近また読み返した。いくつか気づきがあったので、書評ブログとしてまとめる。
参考:『なぜあなたの仕事は終わらないのか』
仕事には2種類存在する。基本問題と応用問題
著者の中島は、数学のテストを比喩として、2種類の仕事があると述べる。
- 単純計算の基本問題
- 難易度の高い応用問題
多くの人は、基本問題を先に終わらして、その後に応用問題に取り掛かろうとするはずだ。
しかし、この取り組み方こそ仕事が終わらない最大の原因である。
基本問題の次に応用問題を解いていくと、応用問題は難易度が高いにも関わらず締切に追われながら作業をすることとなる。締切間際のラストスパートで終わらそうとする人を「ラストパート志向」と呼んでおり、「ラストスパート志向は最も避けるべき」と著者は述べる。
基本問題と応用問題のそれぞれの性質として以下のように挙げている。
- 基本問題…単純作業の積み重ねなので工数を見積りやすい
- 応用問題…取り掛かるまでどのくらいかかるかわからない
上記の性質を押さえた上で、応用問題を先に終わらせることで、ラストパート志向に陥らず早く仕事を終わらせることができる。
締切を守るための仕事の進め方
応用問題は実際に取り掛からなければどのくらいかかるかわからない性質があると先ほど述べた。
では、締切を守るためにはどうすれば良いのだろうか?
それは、工数見積もりを工夫するのだ。
- 「どのくらいかかるか見積もるので、スケジュール割り出しのために2日ください」と伝える
- その2日間をロケットスタート期間として使い、ほぼ完成まで持っていく。
- 万が一その2日間でほぼ完成まで持っていけなければ「危機的状況」と捉えてスケジュール見直しを交渉する。
私はこの本を読んでいてこの部分が最も印象深かった。最初の2日間でほぼ完成(8割)させ、それに満たしていなかったら危機的状況と認識してリスケジュールを行うようだ。
2日間で8割の仕事を終わらせたなら、残りの2割は8日かけて流しとして細々とした仕事を終わらせていく。この流しの期間があるからこそ、スラックとトンネリングに陥らずに早く仕事を終わらせることができると著者は述べる。
ちなみに、3日で終わったとしても、上司に提出してはいけないと述べている。理由は上司に「前の仕事を3日間で終わらせたのだから、この仕事も3日で終わるだろう」と思われ、締切をもっと早く設定されるからだ。
このことを、単にサボるために提言しているのではなく、仕事にはスラック、つまり余白が必要であるという考えから提言を行なっている。
ロケットスタートで仕事を終わらせる
では、8割の仕事を2日で終わらせるにはどうすれば良いか。
それは最初の2日間に「20倍界王拳を使う」と書かれてある。通常の20倍の力を発揮するイメージなのだという。
また、その2日間はメールや電話に出ず、ひたすら仕事を行い、6,7時間で集中が切れてきたらご飯や昼寝を挟むのだそう。著者は4時に起きる朝型生活なので、4時に起きたら10時ごろまでコーヒーも飲まず可能な限りトイレにも行かないようだ。
そのくらいスタートダッシュに命をかけて2日間で仕事を終わらせるようだ。
読んだ感想
元マイクロソフトということだけあって、常軌を逸していると思わずにいられなかった。何から何まで完全に真似をすることはできないだろうが、工数が読めないものは見積もりに2日もらう点や最初の2日間で8割終わらせる、というのはその後8日間の余白を作るために取り入れてみたいと思う。
2024年2月現在、Kindle Unmilitedにて無料で読めるので、まだ読んだことのない若手は一読することをお勧めする。