脳が人間を司る、あるいは不安の正体について

人間を司るのは各個体の脳である。

「読書を習慣化したくてもできない」

「この人といるといつも嫌な気持ちになる」

「将来のことを考えると不安」

脳を起点にこれらの思考が生まれる。

 

脳内を総体とすると神経伝達物質やニューロンが部分となり、それぞれの器官が相互に作用し思考が生まれるが、長くなるため詳しく書かない。

 

脳の特性を知ることで、自分自身、引いては人間そのものを知ることができる。

 

 

原始的な反応を生じさせるHAP系

HAP系とは、視床下部(Hypothalamus)、下垂体(pituitary gland)、副腎(adrenal gland)の3つであり、これらの部位は人間を危険から守るように作用する。

 

道端で蛇を見かけると、一瞬体が固まり、逃げる体勢に入る。

この時脳では、視床下部が、下垂体に副腎からコルチゾールを放出する司令を瞬時のうちに出している。

この現象を人間は「ストレスがかかる」という。

 

人間誰でも、後ろから急に大きな声をかけられると、肩をすくみびくりとする。

過剰に反応する人(つまりビビり)はHAP系が発達している。

しかし反対に、全く驚かない人はごく少数である。これは、進化心理学的にいうと、HAP系が弱い人類は危機に際した時に瞬時に逃げることが遅れ、個体が少なくなったと考えることができる。

 

突発的な出来事でなくとも、不安の正体も、HAP系が危険に対して近寄らないようにするための反応である。

 

HAP系というのは、原始の人間にとっては、なくてはならない器官であった。

 

ストレスとうまく付き合う

「ストレス」という言葉は、避けるべき対象として捉えられるが、そうではない。過度なストレスはもちろん、全くのノーストレスも良いとは言えない。

全くのHAP系を麻痺させた動物実験では、何に対しても無気力になったという。

ストレスとうまく付き合うために、意図的に小さなストレスを自分自身や組織に対してかけることが気力のある人間を作ることになる。

期限を切ることとは、クライアントの信頼を失わないために加えて、短期的なストレスをかけることで対象物への気力を向上させる意義もある。

 

脳はデジタル社会に適応していない

現代では、街中で突然ライオンに襲われる心配は無くなった。

しかし、不安の量は原始に比べて莫大に増えている。

仕事が終わるかどうか、ローンを支払えるかどうか、SNSにいいねがつくかどうか。

現代社会に生きる人は、社会的義務に加えてスマホがいつでも手元にあることによって、常にHAP系が作動している状態になっている。

 

特にアプリ企業は、FacebookやTwitter、youtubeなど、自分達の時間(アテンション)を奪うために莫大なお金をかけている。

時間を奪えば奪うほど広告費が儲かるから。

HAP系をどれだけ作動させれたかが収益源となる。

 

スマートフォンを捨てるのはできないが、自分自身の脳みそがアプリ企業にハックされていることを認識することで、対策が打てるようになる。

 

感情と向き合う

感情というのは、心で感じるものではなく、脳で生成された反応でしかない。

夢のない話ではあるが、不安や恐怖とは脳が作り出した実態のない反応なのだ。

 

そのことを正しく理解することで、現実を認識できるようになる。

「1週間後のテストに対して不安を感じる」「これから乗る飛行機が墜落してしまわないか不安になる」

上の二つの文章はどちらも不安を感じているが、質的には全く異なる。

前者は、不安に対処することができる。後者は、ほとんど起こることのないことに対しての反応である。

不安とは脳の反応であると知って仕舞えば、不安を感じていることをメタで捉え、その対象物(来週のテスト、飛行機の墜落)を正しく評価できる。

 

不安とは押し殺すものではなく、脳が与えてくれた警報器。警報器を止めるか原因に対処するかは、思考で決めれば良い。